2007年08月09日

「拷問室の妖精」第3章・その2

 私がデザートを受け取ると、男は窓際に立って下をながめた。
「寝ておりますな。さすがに」
 女のことを言っているようだ。
「あの責めでも口を割らぬとは」
 男は小さな声でつぶやいた。
「恐ろしい女だ」
 私はその意味を問うことができなかった。男の声があまりに深く沈んだ声だったからだ。
 少し間をおいて私は言った。
「名前は?」
「は?ああ、女の名ですな、あれは相川遥といいます」
「はるか……」
「年は25になります。お客様はもっと若い方がよろしいのでは?」
「いや」
「それは結構なことで。25歳のよい体をしております。少しやつれましたが」
 私はデザートを食べ終えた。いちごを食べるのがこんなにもどかしいと思ったことはなかった。
「さあ、連れて行ってくれ」
 私たちは部屋を出た。
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2007年08月07日

「拷問室の妖精」第3章・その1

 デザートに続いて、札束も運ばれてきた。
「おめでとうございます。賭けの勝ち金でございます」
「ああ」
「先ほどの田中礼子の鞭打ちへの支払い代金300万円はあらかじめ引かせていただきました。しめて1700万、お確かめください」
 私は机の上に詰まれた札束を見ても、何の興奮も感じなかった。
 窓の外を見ると、女は床におろされ転がっていた。すでに鉄板の台もない。
 マスクの男が女の髪をつかんで、何か言っているようだ。
 私は女に会いたくなった。
「あの女には会えないのか?」
 田中礼子も訪ねてきた。あの女も来てくれないのだろうか。
「まずはデザートをお食べください」
「質問にこたえてくれ」
「お客様、少し興奮されておりますようで。ショウを見たあとは、どなたもそうなります。どうやら人間の心の奥底に眠るものを呼び覚ますのでございましょう。デザートを食べて体と心をおひやしください。そのあとで下に参りましょう」
 私は男の長口上をやめさせようとして、その最後の言葉を耳に止めた。
「下に?下にいけるのか」
「お客様は賭けの勝者でございます。その権利があります。ですが、まずはデザートを」
 いちごを盛り付けた銀の器が差し出された。
「わかった」
 私はスプーンを手にした。
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2007年08月06日

「拷問室の妖精」第2章・その15

 女は足を持ち上げようとした。片腕を足の裏に通して、体の方にひきつけた。体が揺れた。そのまま鉄板の上に落ちるのではないかと、私はひやりとした。落ちはしなかった。
「うぐぅぅぅ」
 女の体は鉄板に近い。体を投げ出せば、頭と背中の上半分は鉄板に当たってしまいそうだ。
「あつ、あつ、あっい」
 女はうわごとのように繰り返し叫んでいる。鉄板から、おそらく100度以上の熱気を受けているに違いない。
「もう、やめさせろ」
 私はたまらず言った。
「あれでは死ぬぞ」
「かもしれませんな」
「俺が金を払う、だから」
「それは無理です。お客様は賭けに参加されました。賭けの参加者にその資格はございません」
「な」
 私はドアに向かった。下の舞台へ行こうとした。
「お客様」
「どけ」
 ドアに手をかけたときに、ドアが勝手に開いた。私は思わず立ち止まった。ドアの外にボーイの格好をした若い男が立っていた。
「デザートでございます」
ボーイが持っている盆の上にはイチゴが並んだ皿があった。
「終わりましたな」
 私は振り返った。
「お客様の勝ちでございます」
「勝ち?」
「女はデザートのくだものを白状しませんでしたので、賭けはお客様の勝ちでございます。すばらしい、2000万を手にされました」
「は……」
 私は力がぬけた。窓へ近づき外を見ると、女が高く吊り上げれていた。鉄板の台が3人の男によって運ばれて行く。
 拷問は終わったのだ。
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2007年08月05日

「拷問室の妖精」第2章・その14

 女の身体が下がり始めた。片足を吊っている縄をおろしているのだ。
「あつ、あ、あつ、あ」
 女はわめき続けた。
 4個の鉄球を付けられた方の足は、まっすぐに下を向いている。
 その下には焼けた鉄板がある。
 ついに、女は絶叫し体を硬直させた。
「ぎいいいいいっっっ」
 私は目をそむけた。見ていられなかった。
 しばらくして窓の外に目を向けると、驚いたことに、鉄球をぶら下げた足が上がっていた。
 常識では考えられないことだった。鉄球が4個も付いているのだ。女の力で上がる重さではない。
 全身で鉄球を持ち上げているのか。
 しかし、いつまでも続くはずもなかった。足は震えながらじりじりと降りていった。あるところまで降りたところで、すとんと足は落ちた。鉄球が鉄板に当たって音を立てた。鉄球の間から水蒸気が上がった。足の裏が焼けたのだ。
「ぎゃああっぁぁあっ」
 女は姿勢をくずし、鉄板の上にひざを付いた。じゅうという音がして、そこからも水蒸気が上がった。
「ぐがぁあっ」
 女ははじかれたように鉄板からひざを離した。鉄球の間からは水蒸気がまだ上がっている。
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2007年08月04日

「拷問室の妖精」第2章・その13

 私はあえぐように言った。
「危険だ、危険すぎる」
「医者の話では皮膚の2割を火傷すると、命があぶないのだそうで。両足を火傷すると死ぬかもしれませんな」
 モニタの数字は「1300/3000」となっていた。拷問を見たいために金を払う人間がいるのが信じられない。
「3000という数字は、死ぬ可能性を3割とみているということでして、危険なのはその通りでございます」
 窓の外はようやく水蒸気が消えていた。女の姿がふたたび見えてきた。
「お客様は寄付はされないので」
「しない」
 モニタの数字はずっと「1300」のままだった。このまま数字が変わらず拷問が中止になることを私は祈った。しかし数字はいきなり「2300」に上がり、その後も100ずつ増えて、ついに3000に達した。
 モニタに「GO」と表示された。
「やるようですな」
 女の悲鳴が聞こえた。
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2007年07月26日

「拷問室の妖精」第2章・その12

 窓の外はまだ水蒸気がもうもうとしている。
「や……」
 やめろと言いかけたときに、脇の机に載っているモニタに「OPEN」という単語が表示された。
「始まりましたな」
 私はモニタを見た。「OPEN」の下に「0/3000」という数字も表示された。
「何がはじまった?」
「寄付でございます」
「寄付?」
「このたびの拷問は大変危険でございます。私どももある程度の保険をかけておかねばなりません。そこで観客の皆様に寄付をお願いしております」
「つまり金か」
「ありていに申せば金でございます。このたびは3000万円ほど必要ということで」
 モニタの数字は「900/3000」と変わっていた。
「すでに900ほど集まりましたな」
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2007年07月24日

「拷問室の妖精」第2章・その11

 マスクの男が手招きのような身振りをした。
 舞台の外から3人の男たちが大きな台を押して現れた。ゆっくりと運んでいく。吊られた女の真下まで来たところで、マスク男が手振りで止めた。
 台の上面は黒く、油がひいてあるようにてらてらして見える。女が身もだえを始めた。
「なんだ?」
 空気が歪んで見えた。
「あつ、あついっ」
 女が叫んだ。
「ひいい、あついっ」
 マスク男がバケツの水を鉄板の上にぶちまけた。とたんに白い煙が噴き出した。水蒸気だ。窓の外は水蒸気におおわれて何も見えなくなった。
「あれは、あの鉄板は……」
「焼けております」
 私は恐ろしい考えに震えた。
「まさかあの上に落とすのか?」
「左様で。大変危険ですので、足だけでございますが」
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2007年07月07日

「拷問室の妖精」第2章・その10

 女は気絶したようだった。片足をつられたまま身動きしない。両腕を下にだらりと下げて、ゆっくりと揺れている。
 双眼鏡でのぞくと股間の肌は破れ、赤い肉と、ところどころに白いものが見えていた。普通の状態ではない。
 マスク男が側に立ち、いかにも満足という感じで女の足をなでている。
 やがて男は何か合図をした。女がゆっくりと上がり始めた。片足を吊っている縄を巻き上げているようだ。見上げると縄は窓からは見えない部分へ吸い込まれていた。
(拷問はまだ続くのか)
 女は1メートルほど上がったところで止まった。
 男が鞭で股間を連打した。血しぶきが飛んだ。女は突然目を覚まして悲鳴をあげた。
「っひいいっいいい」
「ぎいい」
 上半身が大きく動く。苦痛に歪んだ顔だ。さっきより大きくはっきりと見える。
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2007年07月06日

「拷問室の妖精」第2章・その9

 下の舞台では凄惨な責めが続いていた。
「簡単には口をわりませんな」
 隣で愉快そうに男が言う。
「口を割るって、何を隠しているんだ、あの女は?重大な秘密なのか」
「まさか、ゲームでございます。今日のデザートに出るくだものでしたか。パパイヤ、マンゴ、あるいはリンゴかもしれません」
「くだもの?」
「あの女には今夜のデザートに使うくだものが何かを教えてあります。それがお客様に出されるまで口を割らなければ良し、口を割れば負けでございます」
「そんな」
 そんな馬鹿げたことで、あの「拷問」を受けているのか。私は下の舞台で続いている「拷問」に目を向けた。女は鞭で打たれるたびに上半身を波打ちさせて痛みにもだえていた。鞭で打たれた股間は血まみれだった。
「ひいいい」
 女の動きが止まった。静かになった。
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2007年07月04日

「拷問室の妖精」第2章・その8

 女は両手を股間に伸ばした。鞭の痛みにたまらず無意識に手で隠したのだろう。男は鞭の角度を変えた。鞭は女の顔を打った。
「がっ」
 女の上半身がはげしく震えた。女が手で顔をおおう。マスクの男が女に顔を近づけた。何か言っているようだ。
 やがて男は股間を鞭で打ち始めた。いやな金属音と女の悲鳴が続いた。
 股間はみるみる赤く腫れあがった。一筋二筋と赤いものが足を伝って流れ落ちた。血だ。鞭が当たるたびにそこを中心として赤い霧が湧き上がった。あれが血煙というものなのだろうか。
 再びマスクの男が顔を近づけた。女は首を横に振る。男は鞭を振り上げた。
「ぎゃああああ」
「ぎいい」
 女の悲鳴が響いた。
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