2007年08月22日

「拷問室の妖精」第3章・その6

 今度は女の体が震えた。
『ひいいっぃぃ』
 男の方はなんともないようだった。男は薄ら笑いをうかべている。
『はあはあ、あなた、助けて』
『やめろ、あなたなんて呼ぶな。俺をはめたくせに』
『ひいいっっ』
 女の体がまた震えた。
『お前のせいだ、お前のおかげで、俺は、こんなことに。騙された。助けてくれ、殺すんならこの女だけにしてくれ』
 小太りな男は目を細めたまま画面を見ていた。
「この2人は何をしたんですか?」
「逃げ出そうとしたんや」
 小太りな男は言った。
「男が女にほれたんやな。かわいそうや、こんなにいじめられて、俺が逃がしたると、2人で逃げ出そうとしたんや。で、つかまってこの通りや」
 画面では男が女を罵倒していた。
「好きあっても、追い込まれるとこんなもんやな。しまいには互いに憎しみおうて、ののしりあい、殴りあうわけや。あわれやで」
 小太りな男がリモコンを向けると映像が消えた。
「辛気臭いのはやめて、遥ちゃんの見よか」
「ええ」
 私は救われた気分になった。足を組みなおした。
「まあ、あんたも変な気を起こさんことやな」
「私ですか、まさか」
「どうやろな、若い人は怖いもん知らずやし」
 小太りな男はディスクを入れ替えた。きゅるきゅると音がして、別の映像が写った。
「さ、遥ちゃんやで」

posted by AWAWA at 07:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 拷問室の妖精
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