2007年08月21日

「拷問室の妖精」第3章・その5

 画面では、男と女がもつれあいながら殴り合いを続けていた。画面の上の方から垂れ下がっているロープを奪いあっているようだ。画面の中で男が叫んでいる。
『こいつ!放せ』
女も叫ぶ。
『あんたこそ』
『熱っっ』
『ひいいっ』
『助けてくれ』
『ぎゃあ』
 小太りな男が言う。
「あんたもさっき見たやろ、鉄板焼き。こいつらも鉄板の上におるねん。だんだんと熱くなってきとるわけや」
「はあ」
「あのロープに捕まれば助かるんやけど、1人分の重みにしか耐えられへんのや」
「蜘蛛の糸ですか」
「なんやて、くものいと?」
「いや、なんでもありません」
「それで、ロープの奪い合いをしとるんや、こいつらは」
 画面の中では同じような場面が何度も繰り返されていた。男がロープにしがみつくと、すうと上がり始める。そこに女が飛びつくと、すうと下がってくる。男が女を蹴り飛ばし、またロープにしがみつく。その繰り返しだ。
 ついに男が女を殴り飛ばした。女の体が飛んでいく。
 小太りな男がつぶやいた。
「あわれやなあ」
「ここは男も拷問するんですか?」
「え?いや、そんなことはないで。これは見せしめなんや」
「見せしめ?」
 男はリモコンを操作した。きゅるきゅると回転音がして、やがて画面が現われた。
「すごいやろ、頭出しも一発やで」
 画面は変わっていた。男と女が並んで立っている。壁に磔にされているようだ。黒い線が2人のからだのあちこに付いていた。男が体を震わせた。
『ぎゃああああ』
 女の方はなんともないようだ。やがて男の悲鳴はとまった。
『や、やめてくれ。お願いだ』
 男が叫んだ。画面の外の人物に向かって言っているようだ。
『そうだよ、そうだよ、こいつが悪いんだ』
『な、なに言っているの』
『俺じゃない。俺は騙されたんだ』
『嘘!』
『こいつだ、この女だ、流すんならこの女に流してくれ』
『やめて』
posted by AWAWA at 08:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 拷問室の妖精
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