2007年08月20日

「拷問室の妖精」第3章・その4

 小太りな男は葉巻を手にとった。
「あんた、あんまり見たこと無い顔やけど、ここは何回目なん?」
「今夜がはじめてです」
「ああ、そうかいな。ほな、ビギナーズラックというやつやな」
「そうですね」
 私が賭けに勝ったことを言っているらしい。私は言った。
「あなたは長いんですか?」
「わし、わしかいな、わしは長いで。一番のお得意ちゃうか」
 小太りな男は煙を鼻から吐き出した。目が悪いのか、目を細めている。
「もう20年くらいやな。おやじの代からのお得意や」
「20年も?」
「そうやで、せやけどここはもっと長いで。江戸時代からやってるそうや」
「江戸時代?」
「昔は女郎部屋から逃げ出そうとした女を買い受けて、なぶりものにして楽しんでたらしいわ。殺してもどこからも文句はこんからな。それが続いて今もやっとるわけや」
 小太りな男は葉巻をもみ消した。ほとんど吸っていない。ぜいたく吸い方だ。
「ほなビデオでも見ましょうか」
 立ち上がり背後の棚に向いた。
「あんた、はじめてなら、遥ちゃんの昔の責めとか見たくないか、見たいやろ、どや?」
「あるんですか?」
「あるある、全部、録画されとるがな。えーと、どれや、えーと、ああ、あったわ」
 小太りな男はビデオのパッケージをあけた。中にはビデオではなく金色のディスクがはいっていた。
「すごいやろ、最近のビデオはこんなんやで」
 どうやらDVDのようだ。小太りな男はリモコンを手にとった。デッキの電源のランプが赤く灯った。きゅるきゅると回転音が聞こえてきた。液晶の小さなテレビ画面に映像が写った。
「あらら、なんやこれ」
「前に見ていた人がディスクを入れたままにしていたんでしょう」
「ああ、さよか」
 液晶の画面では、男と女が殴り合いをしていた。男も女も裸だ。奇妙な映像だった。
「こ、これは?」
「ああ、逃げ出したやつやな、ちょっと見とこうか」
「逃げ出した?」
「まあ、見とき」
 小太りな男は楽しげに言った。
posted by AWAWA at 07:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 拷問室の妖精
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