2006年05月06日

(08話)第1章・その8

 しばらくして舞台が明るくなると、そこには誰もいなかった。
「お客様に田中礼子からお礼を申し上げたいそうです」
 ドアが開くと女がよろよろと入ってきた。鞭で打たれていた女だった。まだ裸のままだ。近くで見ると鞭の痕がより痛々しく見えた。
「あ、ありがとう、はあ、はあ、ご、ございます」
 女は途切れ途切れに礼を言った。顔だけは拭いてもらったようだ。きれいな顔立ちをしていた。しかし幼い。
「あ、あ、りがとう、はあ、はあ」
 息が続かないようだった。裸の胸と腹が大きく波打っている。女は小柄だった。
「田中礼子はお礼に自分の体を好きにして欲しいとのことです。お客様、どうされますか?」
「えっ?」
 今にも倒れそうな女を抱く気にはなれなかった。治療が必要だ。
「いや、遠慮しておく。それよりも医者にみせた方が良い」
「むろん医者にはみせます」
 女は泣きそうな顔になっていた。私の方に進み出た。
「お願いします、はあ、私を、はあ、抱いてください、お、お願い」
「こいつ、なれなれしいぞ」
 女について入って来た男が、女の髪をつかんで引き離した。
「ひい」
 女はよろけて倒れかけた。
「おい乱暴をするな」
 私は男の腕を握った。
「お客様、申し訳ありません」
 別の男が割って入った。ここの支配人らしき男だ。私は手を放した。
「しかしながら、女の扱いは私どもの仕事、口出しは無用とお心得ください」
「わ、わかった」
 女は壁に手をついて体を支えながら立ち上がった。
「抱いて、お願い」
 女は向きを変えて、ふらふらとよろけながら部屋を出て行った。いっしょに入ってきた男達も出て行く。
posted by AWAWA at 13:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 拷問室の妖精
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/4215861

この記事へのトラックバック