2001年02月04日

変態合宿(06話)下書・気浄水



八重子たちは廃寺の裏手に集められた。岩場から水が流れ出して小さな泉を作っていた。そばにバケツが重ねておいてあった。さっきの水はここから汲んできたようだ。院長が話し始めた。
「皆さんの身体の中には大地からの気が満ちいることと思います。ああ、橙さんと紫さんは別ですな。お2人とも心配なさらず、かならず気集療法をお受けできるようにさせてさしあげますぞ」
佐賀沙織は唇をかみ締めていた。
「この合宿では、皆様の身体の中から悪い気を搾り出し、良い気で満ちるようにお手伝いさせていただきます。さて、この水は気浄水と申しまして、大地の気をたっぷりと含んだお水です。皆様にはこれをたっぷりと飲んでいただきます」
院長は泉から両手で水を汲むと飲んだ。
「おいしいございますな。では、皆様、バケツの取っ手は色がついております。ご自分の色のバケツを手に取り、泉の水をたっぷりとお汲みください」
女性達はそれぞれバケツを持った。順に水を汲む。どの女性もバケツいっぱいに水を汲んでいた。八重子も泉にバケツをいれた。思いもかけず深そうだった。バケツを動かしても水がにごらない。八重子もバケツいっぱいに水を汲んだ。

*

八重子たちは重いバケツを持って境内にもどった。
「ではお2人ごとになってください」

*

隣が少し騒がしくなった。
「ごぼ」
「おやおや、吐き出してはだめですよ」
「ごぽ、ごぽ」
八重子は隣の様子をうかがった。

「藍」の女性は、両腕を頭の先へ伸ばした姿勢をして地面に転がっていた。均整の取れたからだだった。肉が気持ちよくついている。乳房の張りもよさそうだった。つんと上を向いている。

小柄な身体の中で鳩尾のあたりが異様にぷっくりと膨れていた。胃が水で膨れ上がっているのだ。わきのバケツを見ると、水は3分の1も無くなっていた。八重子の倍のスピードだ。

白衣の男はひしゃくで漏斗に水を注ぎ足していく。
「う、う、う」
「藍」の女性は身体全体を震わせながら、水を飲んでいった。腹が上下する。漏斗の中の水がゆっくりと減っていく。だが、残り少なになると白衣の男がひしゃくで水を注ぎ足すのだった。休む間が無い。この調子で飲まされていたなら、バケツの水の減り具合も納得がいった。

白衣の男が膨れた腹を触った。
「どうですか、まだ大丈夫ですか」
「あ、あ、い」
縫いぐるみのように可愛い顔はゆがんでいるのに、女性は首を縦に振った。まだ飲めるというのだろうか。無理をしている。八重子は女性達がこんなに無理をする理由がわからなかった。

白衣の男がバケツからひしゃくに水を汲み、漏斗に流し込んだ。「藍」の女性は、全身を震わせて水を飲み始めた。苦しげだ。水がなかなか無くならない。腹が上下する間隔が短くなった。
「ごぼっ」
口から水が噴き出した。「藍」の女性は顔を横に倒した。漏斗が口から地面に落ちた。
「ごぼっ」
「ごぼっ」
水が何度も口から噴き出した。「藍」の女性は咳き込んだ。
「ごぼ、あ、すいません」
「ごぼ」
「ごぼ、すぐ」
「藍」の女性は地面に落ちら漏斗を拾おうと手を伸ばした。
「おっと、いけません、姿勢は崩さないで。漏斗は私が拾いますよ」
「すいません」
白衣の男は漏斗を拾い、「藍」の女性に噛ませた。

八重子は思い切って言ってみた。
「あの、すこし休んだほうがよろしのでは」
「ん」
白衣の男は八重子を見た。これは体格からすると林田だ。
「休みますか?」
「藍」の女性は首を横に振った。
「では、始めましょう」
白衣の男はバケツにひしゃくをつっこんだ。八重子は勝手にしろと思い、口をはさんだのが馬鹿馬鹿しくなった。

*

*

八重子は木陰に腰をおろした。油断すると口から水が吐き出して来そうだった。腹を見下ろすと膨れ上がって、股が見えなくなっていた。
(苦しい)
八重子は木にもたれかかった。
「あの」
話し掛けられて八重子は振り向いた。「藍」の女性だった。彼女も腹がぷっくりと膨れている。
「ごめんなさいね」
「え」
いきなり謝ってこられて八重子はあわてた。
「さっき、助けてくれたのに無視するようなことをして」
「あ。いえ、気にしてませんから」
「藍」の女性はにっこりした。笑うと縫いぐるみにますます似る。
「私、すごく気が立っていて、早くしなきゃ、早くしなきゃって、そればっかり思ってたもんだから」
「わかります」
八重子は女性の真面目そうな人柄を感じた。きっと何事にも全力投球であたる前向きの人なのだろう。
「がんばりましょう」
八重子が言うと「藍」の女性は嬉しそうにこたえた。
「はい、がんばってよい結果をだしましょう」

八重子は1人になると、「藍」の女性の言葉を繰り返した。この合宿にいるかぎり空しい言葉だった。こんな内容の合宿を何日繰り返したところで、成果が出るわけが無い。八重子はできる限り早くスパイを見つけて、この合宿から離れたかった。

*
posted by AWAWA at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 変態治療院
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