2001年02月04日

変態合宿(04話)下書・診察


全員の自己紹介が終わると、院長が手を叩きながら立ち上がった。
「いやあ、皆さんの真摯なお気持ち痛いほどわかりました。力不足ではあっても、全力を尽くしてお助けいたしますぞ」
女性達の中から「お願いします」、「お願いします」と言葉が飛んだ。
「さて、ではこれから1時間ほどばらばらの部屋に分かれて頂きます。皆様をそれぞれ診察して、明日以降の合宿の内容を決める為です。それぞれ色のついた部屋をご用意してあります。では移動願います」
女性達は立ち上がった。部屋を出て廊下に立つと、廊下の右側に並んだ戸口のひとつに「赤」色の色紙が貼ってあった。
「あ、赤だ、じゃあ、私はここ?」
「左様、お入りください。追って診察に参ります」
女子大生は友人と手を振って分かれて、赤色の色紙が貼ってある部屋の中に入った。廊下を進んでいくと、右側に並んだ戸口のそれぞれに色紙が貼ってあった。女性達が自分の色を見つけて騒ぐ。八重子は廊下を一度曲がったところで、「青」色の色紙を見つけた。扉を開けて入る。中は1畳ほどの何も無い部屋だった。扉の外を何人かの女性が通り過ぎていった。

5分ほど待っていると、奥の壁の一部が横に動いた。院長の姿が見えた。院長は口に指を当てて、こちらにおいでと手招きした。八重子は音をさせないように歩いた。

壁を抜けると、6畳ほどの部屋だった。茶器も置いてある。院長は隠し扉を閉めると尋ねた。
「御苦労様でした。さて、スパイは誰か見当がつきましたかな」
「いえ、まだ」
八重子は着るものがないかとまわりを見回した。
「あの、身に付けるものはありませんか」
「おお、それは忘れていましたな。今は残念ながらここにはありませんな。この次は持ってきておきましょう」
「お願いします」
仕方無しに八重子は言った。
「あやしそうな人は目星が付いたのではないですかな」
「いえ。まず、参加した理由が本当かを調べる必要があると思います。女子大生の2人と橙の人は除いて」
「ああ、赤いぶつぶつの人ですな」
院長は無遠慮な言い方をした。
「理由を調べるのはなぜですかな?」
「理由が嘘なら、その人物がスパイであると考えられるからです。少なくとも合宿に参加した理由は別にあることになります」
「すると、声が大きいお嬢さんもOKではないですかな」
「まあ、そうですね」
「それと不感症の奥さんはまさか調べるわけにもいきますまい」
「ええ」
八重子はいつもの調子が出ないように感じた。裸のせいかもしれない。
「すると泣き虫のお嬢さんだけということになりますな。あの人がスパイですかな」
「いえ、それはまだ」
「まあ、調べてみましょうか」
院長はちゃぶ台の上の黒い受話器を取り上げた。
「そう、緑だ」
「矢野さんが言うには……」
「とりあえず、はじめてください」
聞いているうちに八重子は嫌な気分になってきた。院長は受話器を置くと部屋の明かりを消した。ぼんやりと薄明るい。
「え」
八重子は戸惑った。院長が「こっち、こっち」と呼んだ。声を頼りに歩いていくと、院長は壁の近くにいた。
「声を出してはいけませんぞ」
そう言って院長は壁に手をやった。四角い穴があいた。覗き穴だった。

*

見ると「緑」の女性が立っていた。不安げに落ち着きが無い。(「緑」の紙が貼ってあった部屋なの)八重子は了解した。自分達がいる部屋からは女性達が入ったすべての部屋を覗き見できるようになっているらしい。

やがて、白衣の男がどやどやと入ってきた。2人だ。
「緑さん、診察ですよ」
「はい」
「診察の様子をビデオで撮影しますが、よろしいですか」
「え?」
「記録のためです」
「でも、困ります、裸だし」
「ビデオは外には出しませんよ。うちの治療院が信用できませんか」
「いえ、そういうわけでは」
「残念です」
白衣の男達は部屋を出て行こうとした。
「あ、どこ行くんですか?あの、診察は」
「緑」の女性は慌てたように言った。
「いいです、ビデオ撮ってもいいです」
男達は出て行きかけたのを止めた。
「いいんですか?」
「……はい、本当に外にはでないんですよね」
「ええ、治療院の中で厳重に保管しておきますよ」
八重子は歯切りした。こんなに簡単に丸め込まれて。もっとしっかりしなさい。

白衣の男は三脚にビデオをセットした。撮影を始めたようだ。
「では、緑さん、両手を上げて、その棒をどれかを掴んでください」
「はい」
「緑」の女性は恐々という感じで両手を上げた。天井近くには数本の棒が高さの違う位置に張ってあった。「緑」の女性は背が高いので、上の方の棒を掴んだ。乳房が震えている。

ビデオのファインダーを覗いている男が言った。
「よし」
「では、緑さん、これから少し簡単なテストをします。何があっても手を離さずにいてください」
「は、はい」
「緑」の女性がこたえると、白衣の男達が左右に分かれた。いつのまにか手に鞭のようなものを持っている。八重子は目を疑った。
(な、何をするつもり?)

白衣の男が鞭で床を打った。大きな音が響く。
「ひいっ」
「ははは、大丈夫、身体に当てたりはしませんから」
「は、はい」
「緑」の女性は顔が引き攣っている。白衣の男達が次々に汚い言葉を吐き出した。
「このだめ女!」
「仕事もできないくそ女!」
言うたびに床を鞭で打つ。大きな音が響き渡る。
「ひいいぃ」
「泣けば済むと思っているのか!」
「いやあぁ」
「お前何歳だ、子供か!」
「ゆるしてぇ」
「ぴいぴい泣きやがって!」
「やめてぇ」
「緑」の女性は床に倒れるように転がった。がたがたと震えている。パニック症状を起こしているように見えた。
「ほほおお、あれは芝居ですかな」
院長のこの場にふさわしくないのどかな声が聞こえた。
「い、いえ、違うでしょう」
八重子が調べた限りでは、「緑」の女性、千葉知枝には芝居の経験はなかった。学生時代にも演劇部に在籍したことは無いし、今も演劇とは無関係な生活をしている。芝居とは思えなかった。

八重子は少し怖くなった。それでもおびえを悟られないように言った。
「少しやりすぎではないですか」
「そうですな。あの2人は手加減を知らないようじゃな。よく言っておきましょう」
院長は覗き穴を閉じた。
「緑の参加の理由は本当のようですな。さて、するとあやしいのは誰になりますか」

*

院長は診察を始めた。順に部屋を回っていく。八重子は覗き穴からその診察の様子を見て、あやしいところがないかを探るように頼まれた。

八重子は参加者の一覧を見た。


金沢 香織(赤)
佐賀 佐織(橙)
長野 波子(黄)
千葉 知枝(緑)
矢野 八重子(青)
広島 ひろみ(藍)
秋田 あけみ(紫)


最初は赤の女子大生、金沢香織からだった。覗き穴から見ていると、香織は部屋の中で立ったまま、やはり不安そうにしていた。

院長と白衣の男達が入ってきた。
「さて、診察ですぞ」
「よろしくお願いします」
香織もビデオの撮影を承諾するように説得された。「え」と香織は絶句した。男達が説得すると、やがて承諾した。八重子は、女性達が簡単にビデオ撮影を許すことに呆れると同時に歯がゆかった。
(ビデオはずっと残るのよ。そんなに簡単にOKしてはだめじゃない)

ビデオが回り始めると診察が始まった。香織も手を上に上げた姿勢をとらされた。「緑」の女性が取らされたのと同じ姿勢だ。またひどいことをするのだろうか。八重子は不安になった。いかに馬鹿な女子大生とはいえ、あんな扱いは許されない。

しかし今回は白衣の男達も手荒いまねをするつもりは無いようだった。
「気の流れは、女性の場合、股から入り乳房から抜けていくのですな。まず乳房から診ますぞ」
両腕をあげると香織の乳房はますます平べったくなっていた。院長は香織の乳房に手を伸ばした。
「あ」
香織が驚いて、棒を握っていた手を離そうとした。
「腕はそのまま、上げておいて」
「は、はい」
院長の手が香織の乳房をゆっくりと揉み始めた。時々ぐっと掴んだりする。
「痛いですかな」
「いえ」
「これは?」
院長の手が乳房を変形させる。
「痛いですか」
「いえ、そんなに」
「ふむ」
院長は乳房を揉む手を休めず言った。
「どうも、気の流れが弱いようですな。悪い気はたまっておらんようだが、発育が悪いのは気が少ないせいかもしれませんな」
「あ、あの、大きくなります?」
「気の流れを豊かにできれば、その結果、正常な大きさにまで発育することはよくありますぞ」
院長は乳首を掴んだ。
「痛いですかな」
「いえ」
院長は乳首を掴んだまま手を引いた。香織の乳房が円錐形に伸ばされる。
「痛いですか」
「い、いえ」
「ほほお、痛くなったら言ってください」
院長はゆっくり手を引いていく。乳房はかなりの長さに引き伸ばされた。
「あぅ」
香織は身体をせり出すようにした。
「痛い、痛いです」
「我慢できますか?」
「は、はい、まだ」
「では、我慢できなくなった言ってください」
「え、はい」
院長は更に手を引いた。香織は次第に胸を突き出すような格好になってきた。
「あぁ」
「痛いぃ」
「もう我慢できませんか」
「いえ、まだ」
院長は手を離した。香織は息をついだ。
「はあ、はあ」
「ではもう一度」
院長は香織の左右の乳首を掴むと、再び引っ張り始めた。
「あ」
「我慢できなくなったら、言ってください」
院長のやさしい声が響く。
(これが診察?)
八重子はあきれた。あやしげな合宿ではあったが、ここまでひどい内容とは思わなかった。八重子は自分を診察させることだけはさせまいと誓った。

覗き穴の向こうでは、乳首を引っ張られて香織が苦しそうな声をあげていた。
「あうぅ」
「痛い、痛い」
「うう」
院長は楽しげに香織の乳房を引く手を動かしていた。引いたり、緩めたり、揺らしたりする。
「乳房は女の第2の顔ですな。こういうところに表情がでますぞ。男を喜ばせるのは、乳房の表情を豊かにすることです。あなたの乳房も豊かになるとよいですな」
院長はようやく乳首を離した。
「よく頑張りました。では次は下のほうを診ましょう」
白衣の男が香織の左右に立った。香織は声も出ない。男達は香織の両足をそれぞれ持ち上げた。
「きゃあ」
「ほほほ、女性の場合、大地からの気の流れは股から流れ込みます。ここの具合が悪いと、身体の気が足りなくなり、あちこちに問題が起きることになるのですぞ。発育不良などもそれですな」
院長は香織の股間に顔を近づけた。
「あなたの場合は、気の流れが弱いようですが、ひょっとするとここの働きが良くないのかもしれませんな」
院長が手を香織の股間に伸ばした。
「ひっ」
香織が身体を固くした。
「手は棒から離さないで」
白衣の男が注意する。香織は顔を赤くして「はい」とだけ答えた。

院長は香織の股の肉を掴むと広げた。
「あっ」
「どうですかな、痛いですか」
「痛い、痛いです」
「我慢できませんか?」
「できません、痛い、痛い」
「ほおおう」

香織は「股間気弱体質」と診断された。股間から気を吸い込む力が弱いのだという。気を吸い込む力を付ければ、自然と乳房も大きくなるじゃろうと院長は言った。

*

診察ではどの女性も言葉巧みにビデオの撮影を承諾させられた。最も頑強に拒んだのは「橙」の女性、佐賀佐織だった。沙織と院長のやり取りは数分にも及んだ。院長がなだめすかしても、沙織は承諾しなかった。

八重子は覗き窓から見ながら、沙織を応援している自分に気がついた。
(でも気持ちはわかる)
院長はやさしい口調で言った。
「黄色さん、記録を撮るのは大事なことなのですぞ。仕方ないので、お見せしますが、これは2年前に合宿に参加した方の写真です」
白衣の男の一方が院長に書類を渡した。古いファイルのようだ。院長はページをめくった。
「そうそう、これこれ、ご覧ください」
院長は写真を示した。沙織は覗き込んだまま動きを止めた。
(なんなの、なんの写真?)
覗き穴からでは写真が良く見えない。
「そっくり、ですね」
沙織の搾り出したような声がした。
「左様、そして合宿の受けた結果がこういう具合です」
院長はまたページをめくった。
「これは途中経過ですな」
「あ」
沙織の身体全体が震えた。
「これが、合宿から半年後、どうですかな」
「……」
沙織は無言で院長の示す写真に見入っていた。
「この方は、勇気を奮って記録、つまり写真を撮るのに同意してくださいました。そのおかげで、こうしてあなたにも治癒の様子をお見せできるわけです。いかがですかな、記録の大切さをわかっていただきましたかな」
「え、ええ」
「どうでしょう、御協力していただけますかな」
「あ、あの、治るんでしょうか?」
「それは、あなた次第ですな」
沙織はついに撮影を承諾した。八重子は院長が見せた写真に何が写っていたのか知りたいと思った。沙織をここまで心変わりさせるものとは何だろう。

院長達は沙織の身体の撮影を始めた。いろいろなポーズをとらせ、ビデオと写真を撮っていく。どうも興味本位で行なっているようにしか見えない。

白衣の男が沙織を背後から持ち上げた。両膝の下に手を回し、足を広げた状態にする。幼児に小便をさせる格好だ。さすがに沙織も抵抗する様子を見せたが、あきらめたように顔を手で覆った。
「ほほお、このあたりにも赤いものがありますな」
院長が楽しそうに言う。白衣の男がビデオカメラを近づけていく。
「ひょっとすると、膣壁にもあるのではないですかな」
「な、無いです」
「調べたのですかな?」
「い、いいえ」
「ほお、では調べてみましょう」
院長の手が股間を広げるように動いた。指が探っているように動く。
「うう」
沙織がうめくような声を出した。
「おやおや、ひょっとして橙さんは処女でしたかな」
「……」
「どうなのです?」
「……です」
「これは悪いことをしましたな」
八重子は見ていられなかった。覗き穴を閉じた。

*

すべての女性達の診察を覗き見して、八重子はぐったりと疲れた。どの女性もひどい扱われようだった。

やがて院長達が戻ってきた。
「矢野さん、いかがですかな、あやしいそぶりを見せた女はおりましたかな」
「いえ、特には」
白衣のとこたちがマスクをはずした。森田と林田だった。「院長、私は「藍」じゃないかと思いますよ」
「ほおお、なぜかな」
「なんか、くさいですよ。給食センターで働いているという割には、いい身体してましたし」
「矢野さん、どうです」
「「藍」の女性は嘘をついています」八重子の調査では「藍」の広島ひろみはスポーツインストラクターをしている。少なくとも給食センターでは働いていない。
「なんだと」
男達が緊張した。八重子はあわてた。男達が「藍」の女性に手荒い真似をするのを恐れたからだ。「緑」の女性のような真似は2度として欲しくなかった。
「だからといって、スパイとは限りません。身元を隠したいという意識があったのだと思います」
「そうかもな」
森田が言う。
「スポーツインストラクターか、だから、しまった身体をしてたんだな」
八重子は言った。
「院長、お願いなのですが」
「なんですかな」
「参加者からスパイを探すについては、私に一任してください」
「といいますと」
「さっきの緑の女性に行なったようなやり方はやめて欲しいのです」
「ああ、あれか」
林田が頭をかいた。
「すまん、ちょっとやりすぎたよ」
「スパイじゃないかと思ったら、つい力が入ってな」
森田もわびた。
「しかし、あの女ぶるぶる震えてよ」
「はは、面白かったな」
「あれはスパイじゃねえな」
「ひょっとして、腰抜けスパイかもな」
院長が言った。
「もちろん、我々は素人ですからな、探偵の仕事は矢野さんにお任せしますぞ。プロですからな。よろしく頼みますぞ」
「はい、ご期待に添えるように努力します」

*
posted by AWAWA at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 変態治療院
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