1999年10月24日

(02話)下書・御目見得

ゆかり達は、明日「御目見得」をすると言われた。
「何だろう」
「ここのボスが来るんじゃない」
芳枝はカメラの事を言った。ゆかり達が責められる部屋にはカメラが何台も備えてある。責めを撮影しているようだった。
「ビデオにとって裏の世界へ流しているのよ」
芳枝はそう言った。とはいえ、芳枝も裏の世界がどういう物なのかは知らないようだった。弥生は元気がなかった。会話に参加してこない。今朝の責めで打たれた腹が痛いらしい。

翌朝、ゆかり達は3人並んで縛られた。両腕を斜め上に上げて固定され、両足を広げた立ち姿で両足首を固定される。「X」の字のようだ。

向かいの壁は開け放たれて、カーテンが揺れている。その向こうに小柄な人影が動いた。黒装束の男達が床にかしこまっているのを見ると、えらい人のようだ。
(あの人にお披露目されているのか)
ゆかりは裸をさらしながら愉快でない。見世物にされているようだ。

カーテンの向こうから声がした。しわがれた老人の声だった。
「真蔵、元気そうじゃな」
一番近くに座っていた男が首を下げた。
「真一、真二にございます」
男の左右に控えていいた黒装束の男2人がかしこまった。
「見習にて務めております」
「おお」
すだれの向こうの声は少し途切れて続いた。
「立派な後継ぎよの」
黒装束の男は1人1人の名を紹介していった。父親、弟、その下の弟、おい達。血縁でつながった一族だった。すだれの向こうの声はその1人1人に声をかけていく。弱々しく、途切れがちだ。



*

黒装束の男はゆかり達の紹介に移った。
「これより、雪、月、花と仮にお呼びください」
ゆかりは「月」らしい。老人はゆかり達の労をねぎらった。ゆかりが意外に思うほど丁寧な口調だった。老人は一息ついて続けた。
「この中に母も同じようにここに来た者がいると聞いたが」
弥生が体を動かした。
「はい、私です」
弥生は昨日受けた責めがきつくて声を出すのが苦しいと言っていた。声には力が無かった。
「似ておるな」
老人が言った。
「母そっくりじゃ。あなたも、良い子を産んでくだされ」
「母を知ってるんですか?」
弥生の声に力が入った。
「そう。良い顔をしておられた。真蔵も覚えておろう」
黒装束の男が頭を下げた。
「はい」
「母のこと、教えてください」
弥生の母親は寝たきりだという。弥生は物心ついてから病院のベットで横になっている母親の姿しか見ていない。
「真蔵、話してくれ。わしも聞こう」
黒装束の男は話し始めた。弥生の母親は、どのように責められても音を上げることはなかった。見上げた精神力だったと続けた。
「今、母親と同じ方法、同じ手順にて行なっております」
ゆかりは弥生の横顔をうかがった。弥生は真剣な顔をして聞き入っていた。頬が赤くなっている。
「かあさんと同じ……」
「母御は今も入院中と聞く。むごいことじゃ。すべてはここが理由のこと」
老人の声は泣いているようだった。

御目見得は終わった。
posted by AWAWA at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 生贄の森
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